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2022.03.04 | お役立ち

同一労働同一賃金で派遣サービスはどう変わるのか

 2019年から順次施行される働き方改革関連法案ですが、その中の一つに「同一労働同一賃金」があります。2021年4月から大企業だけでなく中小企業にも適用され、正社員だけでなく派遣社員の待遇にも影響があります。ただ、具体的にどう改善していけばいいのか。どう対応していけばいいのか。疑問点の多い同一労働同一賃金について紐解いていきます。

同一労働同一賃金とは何なのか

 同一労働同一賃金は欧米諸国では一般的に根付いている、同じ仕事ならば支払われる対価は同一である、という考え方です。

 日本の雇用形態では、スキルや経験、会社に対する貢献度が同じであっても、正規と非正規では待遇に大きな差が生じていました。しかし、若年層や早期退職者などによる非正規雇用の増加の進行、女性の就労機会の拡大などにより、非正規労働者の比率が増えています。そのため、正規労働者と非正規労働者の業務内容が同じなのにもかかわらず、賃金に格差があるのであれば是正しなければなりません。

 同じ業務でも責任の度合いが違うケースもあります。それでも国が定めた適正な賃金を確保しなければなりません。

 同一労働同一賃金を導入することで、労働者が正規、非正規どちらを選んでも納得できる待遇を受けられ、多様な働き方を選択することができます。

派遣の待遇方式

 派遣会社は派遣スタッフの待遇を「均等均衡方式」と「労使協定方式」のいずれかを決定することが義務付けられました。

 派遣先の労働者に合わせて派遣スタッフの待遇を決定する方式を均等均衡方式といいます。すべての待遇において比較対象労働者の待遇と均等、均衡を図る必要があります。また、差別的取り扱い、不合理な待遇差を禁止しています。

 派遣元において締結された労使協定に基づいて派遣スタッフの待遇を決定する方式を労使協定方式といいます。派遣スタッフの賃金が厚生労働省の公表する職種・地域別の賃金水準と同等以上であること、スキルアップにより賃金が改善されること、派遣元の正規労働者と比べ、不合理な待遇差が生じないことが求められます。

 その他、非正規労働者は事業主に待遇差の内容や理由について説明を求めることができる説明義務の強化、行政による事業主への助言、指導などや裁判外紛争解決手続きの規定整備などが改正されました。

 これにより、非正規労働者は雇入れ時に賃金・福利厚生などの待遇内容について、待遇決定の際の考慮事項に関して、事業主に説明を求めることができます。さらに、事業主との紛争に行政機関が第三者として介入し、紛争解決まで無料・非公開で行うことも出来るようになりました。

企業に求められる取り組み

 同一労働同一賃金の大きな課題は賃金についてです。賃金の引き上げは企業の経営に大きく影響する為、自社の方針を明確にしなければなりません。

 自社の不合理な待遇差の洗い出しも重要です。それを解消すべく対策を講じ、就業規則などを見直さなければなりません。事業主と労働者が納得できるよう、待遇差の内容や理由を明らかにしていかなければなりません。

 人材派遣を導入している企業では、均等均衡方式・労使協定方式のどちらを選んだとしても、派遣会社に比較対象労働者の待遇に関する情報を、契約締結前に提供する必要があります。

 均等均衡方式の場合、業務内容や賃金などの待遇について、選定理由などの情報を提供します。

 労使協定方式の場合、業務に関する教育訓練、リフレッシュルームやロッカールームなどの福利厚生施設などの情報を提供します

 さらに、派遣料金についても企業は配慮義務が生じます。派遣料金の約8割は派遣スタッフの人件費にあたり、派遣会社は同一労働同一賃金を遵守できるようにしなければならず、派遣先はその配慮をしなければなりません。

まとめ

 派遣会社への情報提供や求められた場合の説明義務など手間がかかり、さらに賃金などを上げる影響から人件費などのコストが増加してしまうなど、デメリットが多く、厳しいものに感じます。しかし、様々な働き方を自由に選択できるため、より優秀な人材の確保が容易になるほか、非正規労働者のモチベーションアップにもつながるため、生産性の向上や効率化が期待できます。また、教育訓練の機会も広がるため、スキルアップも見込むことができます。ネガティブなことばかりを考えるのではなく、取り組むべき課題として待遇の見直しと向上を図ることが必要になっていきます。

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